肩の力を抜いてラフに書く、思いつくままに書く

根を詰めて取り組んでいた原稿がやっと手離れして、肩の荷が下りた。僕がこれまで経験して来た中で、最も重い執筆だった。

僕が文章を書くスピードにはかなりのムラがある。1日で1万文字書けることもあれば、100文字とか200文字くらいしか書けないこともある。前者の場合はあまり悩まずにスラスラ書けている時で、後者の場合は悩みに悩んで絞り出すように書いている時だ。今回はかなり後者寄りだった。

今回がいつもと違ったのは、かなりガチガチに構成を考えて書いたこと。規定のページ数ぴったりに収まるように、書くべきこととそうでないことを細かく選り分けて、それらが自然に理解できるように話の順序を何度も再検討して、重複したり無駄があるところ、抜け漏れが出ないようにも意識しながら、また説明の程度の濃淡も偏らないように調整しつつ書いていた。

ブログと大きく違うのは、紙には強い「清書感」があることだと思う。ブログのように、あとから気軽に修正したり、別の記事として書き直したり、といったことが実質的にできない。やり直しが効かない中で、この一発にすべてを賭けるような意識で、完成されたものを作り上げなければならない。もっとも、経験を重ねればまた別の感覚を覚えるようになるかもしれないけれど。

ここで書くときにはそのような緊張感はない。思いつくままに気楽に書けばいい。そういう思いでずっとやってきた。

僕がブログを始めたのは、今から15年以上前の小学生のころだった。当初はなにか書きたいことがあったわけではないが、すでに下火になりつつあったブログブームに影響されて、とにかくなんでもいいのでブログを書くことをやってみたかった。また、簡単なホームページ的なものも作っていたけど、なにかコンテンツになるものがないとどうしようもないと悩みあぐねているときでもあった。

ブログを立ち上げて以来、僕は書けるネタをずっと探し続けることになった。そして捻り出すようにしてなにかしらのブログを投稿した。日々の些細な出来事について書いたり、当時作っていたホームページの話をしたり、ある時は2ちゃんねるのまとめブログを作ったり、ニュース記事まとめサイトみたいなものを運営したりもしていた。

そうこうしているうちに、僕は高校を卒業してウェブデザインの学校に進学した。そこでいろいろと専門的らしいことを勉強して、少しおもしろみのあることを書けるようになってきた。いろいろな人から読んでもらえるようにもなってきた。それくらいの時期から、文章を書くことが自分にとってのアイデンティティであるとも自覚し始めた。

スタンダードデザインユニットのサイトを始めたことをきっかけに、これまでよりもきちんとした文章を書かなければならないと考え始めた。個人ではなく会社として発信するためには、それなりの責任が伴う。文章の書き方について真面目に勉強し始めたのがそのころだった。

そうした経験を経て、よい文章を書くための技量は上がったように思う。その分、あえて書かないことも増えてきた。なにか書くにしても、筆の進みがどんどん慎重になってきた。そういう傾向を感じる。切り捨てられるものが増えて来たということ。

硬直化している気がする。もっと気軽に書きたいし、そうすべきだとも思う。昔のように、あるいはそれよりもっと、軽やかに。僕はその楽しさに惹かれていたはずだ。